連想の練習 05

建築家ユニット
iii architectsと

2026.09.25 Fri

建築の肌に触れる

ある言葉や風景に触れたとき、経験や知識と結びつき、別のイメージへ広がっていくことを「連想」といいます。それは誰にも邪魔されることのない自由な遊びであり、その人の世界の見方を映し出すものでもあります。

連載「連想の練習」では、さまざまなゲストとともに同じ場所を歩き、その先に広がる連想の軌跡をたどります。舞台となるのは東京・日比谷公園。同じ場所でも、歩く人が変われば、目に留まるものやそこから思い浮かぶことも変わっていくでしょう。

今回ともに歩くのは、建築家ユニット・iii architectsの殿前莉世・平井未央・福留愛さん。
家具から建築、都市まで、さまざまなスケールを行き来しながら、人と環境の関係を探ってきたiii architects。鹿児島の海沿いにある平屋を店主の住宅兼レストランへとリノベーションした《阿久根の兼用住宅》や、台湾・澎湖の風土と暮らしに向き合った《Linear Village》など、その場所にあるものや人々の営みに目を向け、そこから立ち上がる建築のあり方を模索してきました。

人のふるまいを起点に、風景や空間を読み解いてきたiii architectsに、日比谷公園はどのように映るのでしょうか。そして、そこからどのような連想が広がっていくのでしょうか。

10:03

大野(以下、O)
歴代の日比谷野音[1]が載ってる。

平井(以下、H)
初代[2]は真ん中にドアがあって、かわいい。オペラが始まりそう。

福留(以下、F)
2代目[3]もいいな。線が少なくて。この線は、音を反響させるためなのかな。

O
そうかも。2代目は2階に窓があるから、ロミオとジュリエット[4]ができるね。

H
どんどん機能的になっていってるのかな。
隣は「不健全と診断されたため撤去を行う樹木」のマップですね。5本が撤去になってる。

O
病気だったりするのかな。でも病気なら、周りの木にも広がりそうな気がするし、寿命なのかもしれないね。

殿前(以下、T)
それ以外にも、「生態系を脅かす可能性がある外来種[5]」で116本撤去になってる。

O
ヤシとか、シュロとかかな?

H
実をカラスが食べて、糞に混じって、いろんなところに運ばれていく。

石(以下、S)
中国だと、犬の糞を踏むと運がつくって言われています。[6]

O
「糞」と「運」って、中国語だと同じ意味なの?

S
意味も発音も、全然違う。

H
日本語でも意味は違うけど、「うんち」の「うん」と「運」って同じ音ですよね。

O
「うんち」の「うん」って、踏ん張るときの掛け声からきてる。

H
えー、面白い!
じゃあ「うんち」と「うんこ」の違いって何ですか?

O
かわいいか、かわいくないか?(笑)
中国語では、名詞を表すときに、「子(こ)」がつくことが多いよね。ハサミは「剪子」だし。

H
椅子とか。

O
杓子とか、梯子とか。

S
最近、中国では子供の名前に「子」をつける人が増えてます。日本っぽくて、かわいい感じがするというか。
名前を2回繰り返して、最後に「子」をつけたり。

H
なんで繰り返すんだろうって、最近めっちゃ思っていて。ちっちゃい子に話すときも、「ナイナイしようね」とか、「イタイイタイだったね」とか。1回でいいじゃん、みたいなことを2回言う。

O
インドネシア語とかは、言葉を2回繰り返して複数形になるよ。[7]「ネコネコ」で「ネコたち」になる。

H
「おいでおいで」とか「よしよし」とか、複数形じゃないときもありますよね。

O
1個目で聞き取れなかった時のために、2個目でフォローする優しさを感じる。

F
親切の延長。

O
日常会話の中で同じ言葉が2個並ぶと、ちょっと変なリズムになるから、強調されるというのもあるかも。

H
確かに確かに。

F
今、2回言ったね(笑)。

10:27

H
変な屋根が登場しました。

O
落ち葉掃除のために穴は開けておきたいけど、形としては、後ろの公会堂に合わせて四角形を保ちたかったのかもね。

T
穴のまわりのスクラッチタイル[8]も、後から切られてる感じがする。

O
確かに。後から切ったのか、現場で無理やり合わせながら施工したのか。

F
両サイドが空いてるから、模型だったら持ちやすそう(笑)。
でも、手前は結構新しそうですよね。

O
奥にある日比谷公会堂[9]にも使われているし、トイレってこともあるから、同じ素材を使うことでなるべく馴染ませたかったんじゃないかな。

O
東大の本郷キャンパスの建物[10]にも、スクラッチタイルが使われてる。この模様は、焼く前のタイルの表面を釘などで引っかいてつけていたらしい。

F
ひえー。そもそも、スクラッチする意味って何なんだろう。

O
割れたときに目立ちにくいとか? もしくは、横のつながりを連続的に見せられるとか。

H
きれいな面をつくるのが難しかったのかな。少し粗さがあることで、ムラを目立ちにくくするとか。

O
それもあるかもね。でも、実際にこれを目の前にすると、気が遠くなるな。

F
このボラード[11]も可愛い! この場所のために作ったのかな。

H
特注っぽいよね。

T
なんでこの形なんだろう。

O
丸パイプ2本分で、ちょうどH鋼 [12]1本分の幅になっているんだね。

H
「これ2つ組み合わせたら、H鋼と同じ幅じゃん!」って気づいた人がいたのかもね。

O
そうかもしれない。向こうの駐車場のボラードも、全部この仕様になってる。

H
なんか唇みたい。

O
あれでしょ? 映画館のマナームービーのキャラ[13]。

H
そうそう。
「ノーキッキング(No kicking)、ノーイーティング(No eating)」(笑)。

O
あの網屋根は、レンガの落下防止なのかな?

H
実際、何かあったんでしょうね。
でも、なんで網なんだろう。お金がなかったからなのかな。

O
それか、日比谷公会堂のサインを見せるために、下から見上げたとき透けるようにしたかった可能性もあるよね。

H
確かに。

O
奥のビルも、だいぶ工事が進んでるね。

F
なんで真ん中付近の階からカーテンウォール[14]を取り付けているんですかね。

O
なんでだろう。上だけ少し違うデザインになるとか。それか、バルコニー[15]があるとか。

F
階高が違うのかな。上下の誤差を、ここで回収しているとか?

H
下は商業用で、ファサード[16]が変わるとかもありそう。

10:45

H
この木、根っこがかなり地表に出てきちゃってるね。

O
この根っこを全部隠すために、部分的にかなり無理して土を盛ってるな。

H
もしかして、GL[17]の設定の問題かな?

O
例えばこの木はもともとここに生えていた木で、公園を設計したときにどれか別の木の高さに合わせてGLを設定したのかも。そうしたら、こっちの木の根が露出しちゃったとか。それで、根元だけ少し盛り土したのかな。

H
でも、ここは勾配がついてるから、雨が降ると土が流れちゃいますよね。

O
実際、流れた跡があるね。本当はこのあたりに芝とか下草を植えて、土が流れないようにしたいところだけど。

H
地被類[18]とかね。

O
当初は、根元にウッドバーク[19]とかを敷いてたのかもしれない。それが雨で全部流れちゃったのかな。雨水はどこに流れていくんだろう。

H
排水計画チェック入ります(笑)。
あそこで一度、水を切ってますよね。

O
でも、そこ自体はグレーチング[20]じゃなさそう。

H
向こう側にはグレーチングがあるから、途中途中に水の逃げ道をつくって、最終的にあっちへ流してるのかな。

O
なるほど。

H
ベンチの裏にもグレーチングが通ってるっぽい。ここにも、もともとは水を受けるために大きめの砂利を入れてたんじゃないかな。でも、その砂利も流れちゃってる。

O
本当だ、砂利も流れてる。最終的にこの雨水枡のところに集まってるね。

H
街灯のデザインも全部違うよね。ここにあるやつも、あそこにあるやつも。

F
このデザインって誰が決めてるんだろうね。

O
東京都とかなのかな。
そもそも日比谷公園って、本多静六[21]が西洋式の公園をつくった経験がないなかで、ドイツの造園書なんかも参考にして設計したらしい。西洋的なものを取り入れつつ、日本的なものも残っている。

T
幕の内弁当[22]みたい。メインがなくて、おかずをちょっとずつ食べるみたいな(笑)。

O
幕の内弁当って、芝居の幕間に食べていたから「幕の内」なんだっけ。

11:05

O
あれが「首賭けイチョウ[23]」。もともと道路拡張で伐採される予定だったのを、本多静六が「自分の首を賭けてでも」って移植させたらしい。

H
イチョウ[24]って東京都のシンボルツリー[25]にも使われているし、葉っぱの形が特徴的だから、ロゴやモチーフにもよく使われますよね。

O
葉っぱだけ見ると広葉樹っぽいけど、マツやスギと同じ針葉樹[26]に分類されることもあるらしいね。
せっかくなので、「松本楼[27]」に寄っていきましょうか。

H
やったー。ご褒美すぎない?

H
コーラフロートがある! フレッシュハーブティーもおいしそう。
「自家製」って書いてあるよ。

O
「自家製」って楽しいよね。シロップやピクルス[28]や。

H
私は今年レモンジャムをつくりました。レモンをいっぱいもらっちゃって。

F
大野さんは最近、御代田[29]に行ってますか?

O
最近はあんまり行けてなくて。庭に食べられたりや匂いがしたりする植物をいろいろ植えてるから、今どうなってるかな。

T
向こうなら「自家製」し放題ですね。

O
標高が高いから、友達は庭に石を積んでその隙間にタイム[30]とかセージ[31]を植えていたりするよ。浅間山[32]が近くて、昔飛んできた溶岩石[33]がそこらじゅうに埋まっているんだよね。石垣とかにも使われてる。

F
私の故郷鹿児島では桜島[34]の火山灰[35]はよく降りましたが、市内ではあんまり溶岩石は見かけませんでしたね。

O
灰で建材をつくったりするの?

F
試みている建築家や研究者はいます。[36]でも火山灰って、ミクロで見るとガラスの破片みたいに尖っていて、扱うのが難しいんです。物につくとなかなか取れないし、洋服にも入り込む。
鹿児島では、灰除けのためにサンルーム[37]のあるおうちが多く、屋根のかかったお墓もあります。

O
その屋根は何製なの?

F
スレート波板[38]やトタン、瓦とか。いろんな形があります。

O
もともとお墓に屋根がついてるんじゃなくて、一つひとつのお墓に後から掛けてるってこと?

F
多くのものはそうです。最近、大隅半島[39]で1つの屋根の下に複数のお墓が並んでいる墓地を見つけたので必ずしも1つの屋根に1つのお墓という決まりはないのかもしれません。

T
そういえば、沖縄のお墓にも屋根がありますね。お墓自体が家形をしています。古いものだと、「亀甲墓[40]」のように、斜面を掘り込んで空間を作るので、地形と一体となっているんですけど。
いずれも、お墓の前に家族でご飯を食べられる広場があったりしますね。[41]

H
知り合いの沖縄出身の人が、お墓を備蓄庫みたいに使って、泡盛[42]を寝かせてるって言ってました。みんなが集まったときに飲むらしい。

F
墓というより、蔵に近いのかもね。

H
あ、見て。メロンソーダ[43]にさくらんぼがついてる。浮かれてるなあ。

O
昭和レトロ[44]だ。あれって定着した印象があるね。

T
最近、「平成」も流行ってますよね。

H
学生で「平成がよかった。令和世代と括られたくない。」と言っている子がいて驚きました。ギャル[45]とかプリクラ[46]とか、ちょっとバカ騒ぎしてる感じが楽しそうって。

F
明るいイメージがあるよね。3人で作業するときに平成のヒットソングを流すことがあるんですけど、歌詞がすごくストレートだねという話をよくします。それに対して最近の曲は、「自分ってなんだろう」とか「自分を認めよう」みたいな、内省的な歌詞が多い気がする。

H
「だらしない」が、かわいいという価値観になっていくのではないか、という研究をしている子がいて。
例えば「空港ファッション[47]」。飛行機の中で楽に過ごすためにスウェットを着るじゃないですか。それを空港だけじゃなく、そのまま街でも着る。

F
確かに、学生にもそういう服装の人は多いよね。

H
「飾らない」を突き詰めていく感じ。

F
今って、ファストファッションで流行りの服が簡単に手に入ったり、写真も自在に加工できて、メイク道具も多種多様になっているなと感じます。誰でも飾れるようになったからこそ、逆にちょっと抜けた感じとか、ありのままを見せるほうに価値が出てきているのかな。映えない日常を晒すような「BeReal[48]」や「setlog[49]」が流行ってたり。

H
空港って、そういう格好でいられる場所でもありますよね。東京の駅だったらやらないけど、空港だとソファで寝たりする。半分、家みたいな状態になる。

T
空港って「非-場所[50]」って言われたりしますよね。

O
リミナルスペース[51]にも近い感じがする。どこでもない場所。

F
国も怪しいですもんね。

O
どこでもないから、リラックスできるのかな。

H
この間、3人で出張に行った時、本当に空港から出られなくなりそうになったけどね。

O
『ターミナル』[52]みたいな?

12:21

H
HIBIYA KADAN[53]は、スケール感がいいよね。

F
色選びもうまいね。この隙間から見える奥の建物(日生劇場[54])の外壁と、HIBIYA KADANの外壁の色味がすごく馴染んでる。

T
遠くから見ると石に穴を穿ったようなボリューム群に見える。近くで見ると、窓枠も仕上げの石もペラペラに見えて、不思議な物質感。

O
模型っぽい。壁の厚みをあまり感じないよね。

H
通路は、思ったより狭いね。

T
でも、これ以上広がると分棟に感じるよね。バラバラだけど、ひとつに見えるギリギリの寸法かも。

O
アルド・ファン・アイク[55]が設計した、クレラー・ミュラー美術館の彫刻パヴィリオン [56]を思い出した。

F・H・T
あー、確かに!

O
3人で建築を見に行ったりする?

H
します、します。むしろ、それが始まりぐらいかもしれない。もともと友達として一緒に建築を見に行っていて、その延長線上で、一緒に活動するようになったので。

F
そういう経験が増えていくと、「あの建物で見た、あの感じ」みたいな共通の言葉も増えていくんですよね。同じ経験をしていない人にはよく分からない、3人だけで通じるコミュニケーションが増えていく。まるで方言[57]のような言葉遣いだなと思います。

H
一人で見に行くと、何か思っても、そのまま忘れて帰っちゃったりする。でも3人でいると、一応、思ったことを言葉にする。

O
2人より3人のほうが、会話が広がることって多い気がする。

F
誰かの話に共感するだけじゃなくて、そこから全く別の話に飛んでいったり。いつも、対話というより、会話が転がっていく感じです。

O
ポッドキャスト[58]とかを聴いていても、2人で話しているものより3人で話しているもののほうが、4人目として入り込みやすい感じがある。2人だと隙がないけど、3人だと、もう一人入ってもよさそうな雰囲気になるというか。

H
3人でフリーペーパー[59]も出してるんです。最近の気づきとか、「ちょっと考え方が変わったかも」みたいなことを書いて、誰でも読めるように公開していて。でも基本的には他の2人に向けて書いています。

F
もともと3人で一緒に住んでいた時期もあったんです。そのときは、同じ経験をすることが多かったのでわざわざ言葉にしなくても自然と共有できていた。でも今は別々に暮らして、それぞれ大学勤務など、違う仕事もしているので。

H
どうやって3人で共有し続けるか、みたいなのがあって。それでフリーペーパーを始めたところもあります。

O
3人だけで通じる言葉もありそうだね。

H
あります。「水平」とか。

O
水平?

H
私たち、「水平クラブ」っていう活動もしておりまして。

F
急に怪しい(笑)。

H
単純に、寝るのが好きなんです。仕事していても、疲れたら水平になる。
「ちょっと寝るね」って言うと、ごめん、みたいな気持ちになるけど、「ちょっと水平になってくるね」だと言いやすい。

F
一人が水平になっていても、「寝てる」じゃなくて、「水平になりながら考えてるんだな」って。

O
水平でも会議できるしね。

H
できます。事務所にも畳を敷きたいんですよ。水平になれるから。

F
だらしなくないからね。水平である、と言ってしまえば。
せっかくなので、ステッカーをお渡しします。

散歩を終えて

西幸門から始まった「連想の練習」は、松本楼に寄り道し、HIBIYA KADANへとたどり着き、約2時間半の散歩を終えました。

建築家同士は、何を話すのだろう。
もちろん、建物や空間についての専門的な知識を持っている。けれど、iii architectsの3人と歩いていると、その知識は答えを出すためというより、目の前の風景に問いを投げかけるために使われているように見えた。

浅間山の火山岩から沖縄のお墓へ。メロンソーダから空港へ。一見、建築からずいぶん遠くまで来たように思えるが、そこにはいつも、人と場所の関係性への関心が通底している。

なぜ、この素材なのか。なぜ、この幅なのか。ここで人はどう過ごすのか。時間が経てば、どう変わるのか。3人の視線は、ものそのものだけでなく、その周囲に生まれる関係へと向かっていく。

建物だけを見るのではなく、素材や身体、土地、時間を行き来しながら、そのあいだにある関係を読み取っていく。家具から都市まで異なるスケールに向き合ってきたiii architectsの建築は、そんなふうに、ひとつの場所をつぶさに観察することから始まっているのだろう。

  • [1] 日比谷野音

    正式名称は「日比谷公園大音楽堂」。1923年に日本初の本格的な野外音楽堂として開設された。ロックやフォークをはじめ数多くの公演が行われ、「野音」の愛称で親しまれている。建て替えのため、2025年10月から使用を休止している。

  • [2] 日比谷野音 初代

    1923年に開設された初代の日比谷公園大音楽堂。音楽だけでなく、舞踏や野外劇、ボクシングなどにも利用された。戦後は連合国軍に接収され、「Tokyo Bowl」と呼ばれた時期もあった。

  • [3] 日比谷野音 2代目

    戦後の接収を経て、1954年に改修・再開した日比谷公園大音楽堂。ブラスバンドからジャズ、フォーク、ロックまで幅広い音楽の舞台となり、現在につながる「野音」の文化を育んだ。1983年に三代目へ建て替えられた。

  • [4] ロミオとジュリエット

    イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる悲劇。敵対する二つの名家に生まれたロミオとジュリエットの恋と死を描く。16世紀末に成立したとされ、演劇や映画、音楽など数多くの作品に翻案されてきた。

  • [5] 外来種

    人間の活動によって、本来生息していなかった地域へ持ち込まれた生物のこと。海外から入ったものだけでなく、国内の別地域から移された生物も含む。農作物や園芸植物など、人間の生活に深く関わる外来種も多い。

  • [6] 狗屎運

    中国語で、思いがけず舞い込んだ幸運や、偶然によって得た幸運を意味する俗語。「狗屎」は犬の糞を意味し、「走狗屎運(狗屎運に当たる)」のように使われる。本人の努力や実力とは関係なく、運よく物事がうまくいった場合に用いられることが多い。

  • [7] インドネシア語

    インドネシア語では、名詞を繰り返す「重複」によって複数を表すことがある。たとえば「orang(人)」は「orang-orang」で「人々」、「buku(本)」は「buku-buku」で「複数の本」となる。ただし数量が文脈から明らかな場合など、必ず重複させるわけではない。

  • [8] スクラッチタイル

    表面に櫛で引っかいたような細い溝を施した外装用タイル。大正末期から昭和初期にかけて日本の建築で広く用いられた。陰影のある独特の表情を持ち、近代建築を象徴する外装材の一つとして知られる。

  • [9] 日比谷公会堂

    日比谷公園内にある多目的ホール。1929年に開館し、設計は佐藤功一。音楽会や講演会、政治演説などさまざまな催しの舞台となり、戦前から戦後にかけて東京を代表する文化施設の一つとして親しまれてきた。

  • [10] 東京大学本郷キャンパス

    東京都文京区本郷にある東京大学の主要キャンパス。旧加賀藩前田家の上屋敷跡に位置し、赤門や安田講堂など歴史的な建造物が残る。スクラッチタイルを用いた建物も多く、近代日本の大学建築を代表する景観を形成している。

  • [11] ボラード

    道路や広場などに設置される杭状の構造物。日本では「車止め」とも呼ばれ、車両の進入を防いだり、人と車の空間を分けたりするために用いられる。石や金属、コンクリートなど素材や形状もさまざま。

  • [12] H鋼

    断面がアルファベットの「H」の形をした鋼材。正式にはH形鋼と呼ばれ、強度が高く、建築物の柱や梁、土木構造物の杭などに広く用いられる。圧延してつくるものと、鋼板を溶接してつくるものがある。

  • [13] 映画館のマナームービーのキャラ

    映画館で上映される盗撮防止キャンペーン「NO MORE 映画泥棒」に登場するキャラクターの通称。頭部がビデオカメラになった「カメラ男」が特徴で、映画の盗撮や違法ダウンロードの防止を呼びかけている。

  • [14] カーテンウォール

    建物の構造を支えず、外部と内部を仕切る役割を担う外壁。柱や梁とは独立して取り付けられ、ガラスや金属パネルを用いたものが多い。高層建築の軽量化や、大きなガラス面を持つ外観を可能にした。

  • [15] バルコニー

    建物の外壁から張り出した屋外空間。一般に手すりや壁で囲まれ、室内から出入りできる。住宅の物干しや休憩場所として使われるほか、建物の外観に陰影や奥行きをつくる建築要素でもある。

  • [16] ファサード

    建築物の正面や主要な外観を指す言葉。フランス語の「façade」に由来する。入口や窓、素材、装飾などによって建物の性格や印象を表すことから、しばしば建築の「顔」にたとえられる。

  • [17] GL

    「Ground Level」または「Ground Line」の略で、建築や土木における地盤面の基準高さを表す言葉。設計図では「GL±0」などと表記され、建物や床、基礎などの高さを決める際の基準となる。

  • [18] 地被類

    地表を覆うように低く生育する植物の総称。「グラウンドカバープランツ」とも呼ばれ、芝類や多年草、低木、コケ類などが含まれる。造園では景観づくりのほか、雑草の抑制や土壌の乾燥・流出を防ぐ目的でも用いられる。

  • [19] ウッドバーク

    樹木の樹皮を細かく砕いた園芸・造園資材。「バークチップ」とも呼ばれ、植栽の根元や地表に敷いて用いられる。土の乾燥や雑草の発生を抑えるほか、泥はねの防止や景観を整える役割も持つ。

  • [20] グレーチング

    鋼材などを格子状に組んだ床材や蓋のこと。道路の側溝や排水溝、建築物の床などに用いられ、水や空気を通しながら人や車が通行できる。一般には側溝に設置された金属製の格子蓋を指すことが多い。

  • [21] 本多静六

    1866年生まれの林学者、造園家。日本の「公園の父」とも呼ばれ、日比谷公園をはじめ、大濠公園や羊山公園など全国各地の公園整備に携わった。日本に近代的な公園設計の考え方を広めた人物として知られる。日比谷公園は本多の設計をもとに1903年に開園した。

  • [22] 幕の内弁当

    ご飯と複数のおかずを詰め合わせた、日本を代表する弁当の形式。名称の由来には諸説あるが、芝居の幕間に食べる弁当として広まったとする説がよく知られる。焼き魚、卵焼き、煮物、漬物などを組み合わせることが多い。

  • [23] 首賭けイチョウ

    日比谷公園にある推定樹齢400〜500年のイチョウ。道路拡幅工事で伐採される予定だったところ、本多静六が「自分の首を賭けても移植する」と主張し、1902年に現在地へ移されたという逸話から、この名で呼ばれるようになった。

  • [24] イチョウ

    イチョウ科イチョウ属の落葉高木。扇形の葉が特徴で、秋には鮮やかな黄色に色づく。約2億年以上前から近縁の植物が存在していたことから「生きた化石」とも呼ばれ、現在は街路樹や公園樹として世界各地に植えられている。

  • [25] シンボルツリー

    庭園や公園、建築などを象徴する樹木のこと。樹形や大きさ、歴史的背景などから、その場所の目印や象徴となる木を指す。既存の大木を生かす場合と、新たに象徴的な樹種を植える場合がある。

  • [26] 裸子植物

    種子植物のうち、胚珠が子房に包まれず露出している植物の総称。マツやスギ、イチョウ、ソテツなどが含まれる。被子植物よりも古くから存在し、中生代には地球上で広く繁栄していた。

  • [27] 松本楼

    日比谷公園内にある洋食レストラン「日比谷松本楼」。日比谷公園の開園と同じ1903年に創業し、カレーライスやハヤシライスなどで知られる。公園とともに120年以上の歴史を重ねてきた老舗レストラン。

  • [28] ピクルス

    野菜や果物などを、酢や塩水、香辛料を使った漬け汁に漬けた保存食品。キュウリが代表的だが、タマネギやニンジンなどさまざまな食材が用いられる。世界各地に異なる製法や味付けが存在する。

  • [29] 御代田の住居群

    長野県御代田町で、2017年から継続している五世帯による共同プロジェクト。複数の住居と庭を段階的に整備しながら、建築と外部空間、周囲の環境との関係を探る試みが続いている。

  • [30] タイム

    シソ科イブキジャコウソウ属のハーブ。地中海沿岸を中心に分布し、小さな葉に強い芳香を持つ。肉や魚料理の香りづけに使われるほか、古くから薬草や保存料としても利用されてきた。

  • [31] セージ

    シソ科アキギリ属のハーブ。地中海沿岸を原産とし、独特の清涼感とほろ苦い香りを持つ。肉料理の臭み消しやハーブティーに使われ、ヨーロッパでは古くから薬草としても親しまれてきた。

  • [32] 浅間山

    長野県と群馬県の県境に位置する標高2,568メートルの活火山。現在も活発な火山活動を続けており、歴史上たびたび大規模な噴火を起こしてきた。1783年の「天明の大噴火」は特に大きな被害をもたらした。

  • [33] 溶岩石

    火山から噴出した溶岩が冷えて固まった岩石。内部に気泡による無数の穴を持つものも多く、水はけや通気性に優れる。庭園の景石や園芸用土、建築材料などにも利用される。

  • [34] 桜島

    鹿児島湾に位置する活火山。かつては島だったが、1914年の大正噴火で流れ出した溶岩によって大隅半島と陸続きになった。現在も噴火活動を続け、鹿児島を象徴する景観の一つとなっている。

  • [35] 火山灰

    火山の噴火によって放出される、直径2ミリメートル以下の細かな火山噴出物。岩石や鉱物、火山ガラスなどからなり、風に乗って広い範囲に降り積もる。土壌を形成する一方、交通や農業、建築物などに被害を与えることもある。

  • [36] 火山灰を利用した建材

    火山灰には、セメントの成分と反応して硬化を助ける「ポゾラン反応」を示すものがある。古代ローマでは火山灰を混ぜたコンクリートが建築に利用され、現在も火山灰をセメントの一部に置き換える建材研究が行われている。

  • [37] サンルーム

    大きなガラス窓やガラス屋根を設け、日光を多く取り込めるようにつくられた室内空間。住宅の居間や植物を育てる場所などに用いられる。ヨーロッパで発達した温室やコンサバトリーとも深い関係を持つ。

  • [38] スレート波板

    波形に成形されたスレート製の建築材料。軽量で耐火性や耐候性に優れ、工場や倉庫、住宅などの屋根や外壁に広く使われてきた。古い製品には石綿を含むものがあるため、改修や撤去の際には注意が必要となる。

  • [39] 大隅半島

    鹿児島県南東部に位置する半島。東側は太平洋、西側は鹿児島湾に面し、桜島とは1914年の大正噴火によって流出した溶岩で陸続きになった。南端には佐多岬があり、温暖な気候と豊かな自然で知られる。

  • [40] 亀甲墓

    沖縄に見られる伝統的な墓の形式。正面から見ると亀の甲羅のような曲線を描く大きな屋根を持つことから、この名で呼ばれる。中国南部の墓制の影響を受けたとされ、琉球王国時代以降に広まった。

  • [41] 墓庭

    沖縄の伝統的な墓では、墓室の前に「墓庭」と呼ばれる広い空間が設けられることがある。親族が集まって祖先を供養する場でもあり、清明祭(シーミー)などでは墓前に料理を並べ、家族で食事をする習慣がある。

  • [42] 泡盛

    沖縄で造られる蒸留酒。主にタイ米を原料とし、黒麹菌を用いて発酵させたもろみを蒸留して造る。長期間熟成させたものは「古酒(クース)」と呼ばれ、沖縄の食文化や祭事と深く結びついている。

  • [43] メロンソーダ

    炭酸水に緑色のメロン風味シロップを加えた清涼飲料。日本では喫茶店やファミリーレストランの定番として親しまれてきた。アイスクリームやサクランボをのせた「クリームソーダ」も、昭和の喫茶店文化を象徴するメニューの一つ。

  • [44] 昭和レトロ

    昭和時代、特に1950〜80年代ごろの生活文化やデザインを懐かしむ表現。純喫茶、看板、家電、雑貨、商店街など、当時を思わせる色彩や意匠を指して使われる。2000年代以降、若い世代にも一つの様式として再評価されている。

  • [45] ギャル

    日本の若者文化から生まれた女性のスタイルや文化を指す言葉。特に1990年代から2000年代にかけ、派手なファッションやメイク、独特の言葉遣いなどを特徴とする「ギャル文化」が大きな流行となった。

  • [46] プリクラ

    「プリント倶楽部」に由来する写真シール機の通称。1995年に登場し、撮影した写真をシールとして印刷できることから若者を中心に大流行した。現在では画像加工やメイク補正など、多彩な機能を備えている。

  • [47] 空港ファッション

    空港を利用する際の著名人の服装を指す言葉。特に韓国の芸能文化を通じて広まり、移動時の私服でありながら、メディアやファンに見られることを意識したファッションとして注目されるようになった。

  • [48] BeReal

    フランスで生まれたSNS。1日1回、不定の時刻に通知が届き、原則2分以内にスマートフォンの前面・背面カメラで同時撮影して投稿する仕組みを特徴とする。加工されたSNS投稿とは異なる「日常のリアルさ」を掲げて普及した。

  • [49] setlog

    韓国で生まれたSNS。2秒の短い動画を撮影し、一日の記録を自動的に1本のVlogにまとめる。一定時間ごとに届く通知をきっかけに、その瞬間の日常を撮影し、友人と共有できる。編集せずに日々の何気ない場面を残せることを特徴とする。

  • [50] 非-場所

    フランスの人類学者マルク・オジェが提唱した概念。空港、高速道路、ホテル、ショッピングモールなど、歴史や人間関係、固有のアイデンティティとの結びつきが希薄になりやすい現代的な空間を指す。

  • [51] リミナルスペース

    「境界」や「敷居」を意味する言葉に由来し、ある場所から別の場所へ移る途中にあるような、中間的な空間を指す。無人の廊下や夜の学校、空港など、見慣れているのにどこか非現実的な風景を表す言葉としてインターネット上でも広まった。

  • [52] 映画『ターミナル』

    2004年公開、スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演の映画。祖国のクーデターによって行き場を失い、ニューヨークの空港で暮らすことになった男性を描く。パリのシャルル・ド・ゴール空港で長年生活したイラン出身のメヘラン・カリミ・ナセリの実話に着想を得ている。

  • [53] HIBIYA KADAN

    1872年に東京で庭園業を始めたことをルーツとする日比谷花壇。1950年、東京都の要請を受けて日比谷公園にフラワーショップを出店し、「日比谷花壇」と名付けられた。現在は花の販売に加え、造園や空間装飾、まちづくりなども手がける。

  • [53’] 乾久美子

    1969年大阪府生まれの建築家。東京藝術大学、イエール大学大学院で建築を学び、青木淳建築計画事務所を経て、2000年に乾久美子建築設計事務所を設立。商業施設から住宅、公共建築まで幅広く手がけ、周囲の環境や人の営みとの関係を丁寧に読み取る設計で知られる。

  • [54] 日生劇場

    東京都千代田区有楽町にある劇場。村野藤吾の設計による日本生命日比谷ビル内に1963年開場した。曲面で構成された壁や天井、ガラスモザイク、約2万枚のアコヤ貝を用いた天井など、洞窟を思わせる幻想的な内部空間で知られる。

  • [54’] 村野藤吾

    1891年佐賀県生まれの建築家。早稲田大学卒業後、渡辺節建築事務所を経て1929年に独立。日生劇場や新高輪プリンスホテルなど数多くの建築を手がけた。素材や装飾、曲線を巧みに用いた繊細な空間表現で知られ、1967年には文化勲章を受章した。

  • [55] アルド・ファン・アイク

    1918年生まれのオランダの建築家。戦後の近代建築を代表する建築家の一人で、孤児院やプレイグラウンドなどを通して、人と人の関係や「間」の空間を重視した設計を展開した。建築家集団Team 10の中心人物としても知られる。

  • [56] クレラー・ミュラー美術館 彫刻パヴィリオン

    オランダのクレラー・ミュラー美術館の彫刻庭園にある、アルド・ファン・アイク設計のパヴィリオン。1960年代に設計された仮設展示施設をもとに再建されたもので、壁と屋根が緩やかに連続し、彫刻と自然、建築が交差する空間をつくっている。

  • [57] 方言

    ある地域や社会集団で使われる、共通語とは異なる特徴を持つ言葉。同じ言語の中でも、発音や語彙、文法、アクセントなどに違いが見られる。土地の歴史や文化、人々の交流を反映しながら形成され、地域ごとに多様な表現が受け継がれている。

  • [58] ポッドキャスト

    インターネットを通じて配信される音声番組。ニュースやインタビュー、トーク、ドキュメンタリーなど内容は幅広く、スマートフォンなどで好きな時間に聴くことができる。2000年代半ばから普及し、現在では主要な音声メディアの一つとなっている。

  • [59] スリーペーパー

    iii architectsが2021年1月から発行しているフリーペーパー。コンビニのネットプリントを利用し、毎月1人あたり約1200字のコラムを掲載。建築や都市、暮らしなど、3人の建築家の視点で日々の気づきを掘り下げている。これまでの内容をまとめた書籍『スリーペーパーズ 2021-2025』が2026年7月に刊行された。

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