Correspondences 01

Correspondences

2026.06.02 Tue

How we shape nature, and how nature shapes us

文字通りの真実を比喩的に受け取るのではなく、比喩的な真実を文字通りに受け取ることです。
(中略)
比喩的な真実を文字通り受け取ることは、詩の方法だけではなく、アートの方法なのです。というよりも、たぶん何よりもまずアートの方法なのです。

『応答、しつづけよ。』ティム・インゴルド(亜紀書房)P39

インゴルド, T. (2023). 『応答、しつづけよ。』(奥野克巳 訳). 亜紀書房.

ゴールドウインは、「人間を挑戦に導き、人と自然の可能性を広げる」というパーパスを掲げている。

人は自然を対象化し、生活から文化、戦争に至るまで、人間という種の繁栄と存続のための資源としてきた。一方で、大きな生態系の一部として存在する人間は、自然を遠ざけることもまたできない。人間は、生物も無生物も存在する全体の生態系と環境の中にいて、関係し、影響を与えあっている。

自然に触れること。フィールドに身を置くこと。風や水、土壌、植物、動物、地形、気候といった非人間の存在と出会うこと。その経験のなかで、私たちは自然を一方的に保護すべき対象としてではなく、共に生きる存在として、関係の中で変化し合う存在として、感じ取ることができるのではないか。

人間は、関係しあう中で、生活から科学まで多くの知恵や喜びを自然から学びとってきた。人間のそうした拡張的な可能性は、他の生物が環境との関わりによって発現させることとは違い、生態系におけるバランスを大きな偏りを生むことにもなってしまっている。一方でこれまで人間が起こしてきた変化に対して、よりよい未来を模索していく可能性に意識的に賭けていくことができるのも、人間ならではである。そのひとつが、アートという方法なのだと考えている。

本リサーチテーマである「応答/Correspondences」は、人類学者ティム・インゴルドの著作『応答、しつづけよ。』で語られたことに端を発している。

風を読み、地形に身体を預け、雪や雨に行動を変えられるように、素材が環境に応答し、身体がそれに応答する。そこでは、人間だけが世界に働きかけているわけではない。人間もまた、自然や道具や環境から働きかけられ、変化している。ティム・インゴルドは、こうした関わりを「応答(Correspondence)」という言葉で捉えようとした。それは、あらかじめ分かれたもの同士の相互作用ではなく、関わりのなかで互いが形づくられていく過程を考えるための視座である。

インゴルド, T. (2025). 『教育とは何か』(古川不可知 訳). 亜紀書房.

また、インゴルドは別の著作『教育とは何か』の中で、自分のフィールドである人類学とアートと教育の関係を論じる箇所で、「応答」するあり方としての寛大さと他者性に開かれることの重要性に触れている。

私にとっての人類学は、私たちすべてが住む一つの世界内における人間の生のあり方と可能性についての、寛大で、開かれていて、比較にもとづいた、それでいて批判的な探究である。それが寛大だというのは、他の人々がおこなうことや話すことに注意を払い、応答するからである。探究のなかで私たちは与えられたものを快く受け取るのであって、与えられていないものを引き出そうと策を弄するのではない。そして私たちは、自らを知的、実践的、道徳的に形成するために他者から負ったものをお返しするために苦心するのである。

『教育とは何か』ティム・インゴルド(亜紀書房)P174

人と自然は、どのように応答し合っているのか。
何を受け取り、何を負い、何をお返しするのか。
他者に触れることで、私たちの「生」はどのように変わるのか。
テクノロジーやものづくりは、その関係をどのようにひらくことができるのか。
そして、人間は、世界の一部としてどんな姿勢でともに生きていくのか。

本連載「Correspondences」は、こうした問いを手がかりに、「応答」に関する思考やアートの実践の現場に耳を傾け、人と自然の関係性を捉え直していきたい。

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