アウトドアをフィールドにする企業が災害に対してできることは何か
2024年1月1日から始まる
2024年1月1日16時10分頃、石川県能登地方を震源とする最大震度7、マグニチュード7.6の地震「令和6年能登半島地震」が発生しました。日本全国の人が発災からの様子をテレビやラジオ、SNSなどで固唾を飲んで見守っていました。ビルから住宅まで多くの建物が倒壊し、輪島市では大規模火災も発生。全体の死者は260人、建物は全壊が8,063棟、半壊が16,720棟(6月18日時点)に及んでいます。
ゴールドウイン創業の地であり本店を置く富山県小矢部市でも震度5を記録、幸いなことに死者こそいなかったものの、県内の住宅被害は全壊242棟、半壊730棟含む16723棟(4月23日時点)が記録されています。
起きていることをしっかり見ること
ゴールドウイン「フィールドリサーチラボ」、最初のリサーチテーマは「災害とアウトドア」です。
フィールドリサーチラボの立ち上げにあたり、何をリサーチするか様々な検討をしていた最中、能登半島地震が起きました。創業の地に近い土地で起きた災害と、日々報じられていた大変な被害状況。他のどんなテーマよりもまず、そのことをしっかりと見て、知って、考え、動いていくことが必要だとメンバーの考えは一致しました。
ゴールドウインは支援として1,500万円の寄付及び経済産業省からゴールドウインも参加する社団法人 日本スポーツ用品工業協会への呼びかけに応えるかたちで衣類を提供しましたが、自分たちの会社の足元で起きた地震に対し、より主体的な支援ができたのではないかとフィールドリサーチラボのチームは考え、企業としての支援の可能性をはじめ、災害対策を検討することにしました。
アウトドアフィールドで培ってきたものを生かす
自分たちの事業を展開する山や海のアウトドアフィールドにおいては、自分の身は自分で守る自己完結が基本です。厳しい気候や環境への対応や食事、排泄、睡眠など、栄養から衛生まで人間の生理現象や健康は、アクティビティを行う人やチームが自分自身で管理し対応できるようになっていなくてはいけません。
ゴールドウインはどんな条件下であっても、その人自身の力を最大限発揮し、活動できるようにするためのプロダクトを研究開発し続けてきました。元旦に起きた能登半島地震も2011年3月に起きた東日本大震災も寒い日本の冬に悩まされました。そうした状況に対し、寝袋やテント、ダウン衣料や服のレイヤリング(重ね着の方法)などのプロダクトとアウトドアでの経験や知恵をもっと積極的に伝えることで、生存率をはじめ避難所生活における安全、安心、快適度を高めることに寄与できたのではないか。
解決すべき課題も支援も多様にある
しかし衣類だけで苦しい被災や避難生活がどうにかなるものではありません。人命救助から温かい食事や空間の快適さとプライバシー、衛生や医療問題、適切なトイレのお風呂の設置、情報環境整備やメンタルヘルスのケアなど、解決しなければいけない問題は状況に応じて無数にあります。そうした問題を解決すべく、発災後自治体はもちろん、自衛隊や地域の社会福祉協議会をはじめ、DMATなど災害支援の医療・保健チームが入り、NPOやNGOが積極的に現場での支援を行い、ボランティアがそこに加わっていきます。
1995年の阪神大震災以来、アウトドア義援体として活動する同じアウトドアアパレルメーカーのモンベルさんは自身の活動について「身近なところから、できることをやる」と話してくれました。大阪公立大学で防災、復興政策を研究する菅野拓准教授への取材でも、復興支援における自治体とNGO/NPO、企業との役割について「餅は餅屋」がすべきと解説します。
日々の生活も自然災害も自然と生きること
モノづくりをする会社としてすべき支援はモノを届けることか、それ以外にもあるのか。自然災害に悩まされ続ける日本にあって、気候危機、環境課題が喫緊の課題となり災害リスクを増やす可能性も指摘されるいま、自然や環境をフィールドとする企業のゴールドウインが災害に対してできることは何か、そこで働く人間ができることは何か。
人が自然と接するのは山や森、海に入っていったときだけではありません。日々の生活も突然起きる自然災害もすべて自然と関わることです。何かが起きた時だけでなく平時から行えることまで、リサーチを通して様々な可能性を検討し、行動へと繋げていきます。
【Research Contents – 目次】
1.Timeline – 95年以後の地震と課題
2.ゴールドウインと災害
3.モンベルに聞く アウトドア義援隊
4.能登地震被災者の声 輪島市漆芸家・桐本滉平
5.能登・輪島・珠洲で、私たちが見たもの -DAY 1-
6.能登・輪島・珠洲で、私たちが見たもの -DAY 2-
7.野口健インタビュー「能登に届けた1万個の寝袋 – アウトドアは災害に役にたつ、という実践と課題」
8.防災・復興政策研究者に聞く「ある地域にたまにしか起こらない災害のために企業が平時からしておくべきこと」
9.ゴールドウインのこれから – 環境づくりと災害(新社屋/富山の森/包括連携協定)
10.これから続けていくこと(NPO /NPOとの連携模索・プロダクトプロトタイプ開発)